平成最後の夏

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平成最後の夏

「今年って、平成最後の夏だけど、何かやんの? 松ちゃん」 「松ちゃんじゃない、松平先生と言え」 「えー、いいじゃん、ガッコの先生じゃないんだし」  たしなめられて、槌谷明日夏(つちやあすか)はくちびるをとがらせた。  甘乃川駅前、甘乃川ゼミナール、授業が終わると、生徒達はすぐに帰宅するのだが、七月にして、既に熱帯夜の片鱗を見せる夜、外気の蒸し暑さに、少し涼んでいこうというのか、明日夏と、幼馴染みの碇多恵(いかりたえ)は、講師室に残り、後片付けをしている塾講師の松平慧一(まつだいらけいいち)に雑談をしかけていた。
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