平成最後の夏

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 いつもなら、帰宅を急かす塾長は、今日は別教室の方へ行っていて居ない。松平は多恵と明日夏が中学の頃から馴染みの講師で、気心も知れている。  松平の方も、在籍の長い二人に口うるさくは言わない、口では帰るようには言うが、既に鍵を閉める時まで残る事を予想しているのか、話しかけられて、むげに追い払うような事はしなかった。 「俺はもうトシだし、夏だから、って、特にこれといってはなあ……」  律儀に松平は答え、そして、続けた。 「てか、お前らはどうなんだよ、ダメだぞ、不純異性交遊は」  釘を刺すように言うと、多恵は恥ずかしそうに顔を染め、明日夏の方はあせったように否定した。 「バっ、ねーよ! そんなの! 多恵、帰るぞ!」
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