1.Noise “騒擾”

31/33
4人が本棚に入れています
本棚に追加
/40ページ
 昼下がりのカフェでの会話にしては、余りに重くて殺伐とした話題であったが、それを聞く美月は、時に瞼を薄く滲ませながらも、じっと麻理亜を見つめたまま最後まで目を逸らす事も無く、やがて話を聞き終えた美月は、静かな口調で麻理亜に語り掛けた。 《麻理亜ちゃん………話してくれてありがとう。 これで繋がった気がするよ。 さっきの爆発の時、警察の人でさえパニくってる中、麻理亜ちゃんが冷静で居られた理由が… でもね、私が思い付く“戦争”のイメージは、ただとてつもなく怖い物だって事だけで、それ以上イメージが広がらなくて……… だから私には、そんな怖い戦争のイメージと麻理亜ちゃんがどうしても結び付か無いの》  一つ一つ自分の思いを確かめるかの様に話していた、その時の美月の姿が麻理亜の脳裏を過ぎる。 《痛い事。辛い事。哀しい事。怖い事。 そんな事を沢山経験しながら、私にはとても想像出来ない世界の中を、麻理亜ちゃんは必死で生き抜いていたんだね。 これ。上手く伝わるかどうか解んないけど、さっきの爆発の時、麻理亜ちゃんは真っ先に私を助けてくれたでしょ? だから麻理亜ちゃんはね、自分で気付いてないだろうけど、とっても優しい女の子で、それは過去の麻理亜ちゃんも同じだったと私は思うよ》  瞼に滲んだ涙をセーターの袖でごしりと拭い、はにかんだ笑みを浮かべる美月の優しい言葉に、 麻理亜の涙腺も緩みかけたが、何はともあれ彼女の優しさや思いやりが、ただただ麻理亜には嬉しかった。  日本へ来て早々に、自分の過去を受け入れ、変わらず接してくれる友達に出会えた奇跡に感謝しつつ、今後一生物の宝物となるだろうティーカップを麻理亜は、優しい眼差しで見つめ続けていた。
/40ページ

最初のコメントを投稿しよう!