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うだるような暑さは苦手だ。
じりりと太陽が照りつける中を、蝉がうるさく鳴いている。
最近の真夏は殺人的な暑さで、チョコレートやアイスは少し放置したらすぐに溶け消えてしまう。
冷たい飲み物はすぐなまぬるくなるし、溶けにくい砂糖でできているとかで熱に強いのが売りの砂糖菓子も溶ける。グミやゼリーも崩れる。もっぱら食べるのは焼き菓子ばかり。
室内じゃないと楽しめないなんて、アイスもチョコレートも全く贅沢品になったものだった。
「今年は異常気象により、記録的な猛暑日が続いています」ってニュースが繰り返すのは、もう何度目のことか。
毎年こうも異常気象では、諦めが先に来る。
あっちいな、と口の中で文句を言いながら、ひらひら手のひらで仰いでみた。なまぬるい風が弱々しく鼻先をかすめる。
変わらず汗が流れるのを、不快感とともに押し殺す。
暑い。アイス食いたい。せめて扇風機が欲しい、と思って。
そうして。
真夏の日差しみたいな顔が頭をよぎった。
こんなひどく暑い日にはいつも、もう何年も前の、だけど今でも薄れないあの日々を思い出す。
──彼女がいなくなったのも、こんなふうに蝉が鳴く、ひどく暑い夏の日だった。
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