盛夏

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中学三年生の夏休み。夏休み前の定期テストでまさかの一桁を取った俺は、補講を受けざるを得なかった。 いや、ちょっと眠かったんだって。いつもはそんなにひどくないんだって。今回は解答欄がずれたのだ。 ……でもまあ、一応、受験生だし。オープンキャンパスに行って楽しそうだったからって理由だけど、行けたらいいな、くらいのふわっとした志望校はある。 テストの答案を返却するとき、震える声を無理矢理押さえつけたような呼び方で名前を呼ばれたからなんだろうと思ったら、先生はあの有名な叫ぶひとの絵みたいな顔をして、暗い顔で厳かに補講を言い渡した。 「あのね」 「はい」 「もし解答欄が合ってれば八十点です」 「はい」 「八十点です」 「……ハイ。スミマセン」 確かにちょっとそんな凡ミスで一桁はまずいかもしれない。うん。そんなわけで、大人しく補講を受けに来た。 噂によれば、補講を突きつけられたのは一桁を取った生徒だけらしいから、多分俺だけだろう。 先生と一対一はちょっと嫌だけど、その方が気楽でいいや、なんて思いながら、ガラリ、引き戸を開けたら。 「えっ、なになに君もお仲間!?」 やたらテンションが高い女子がいた。 目を期待にキラキラさせたその女子に、思わず固まる。 ……え。嘘だろおい。 え。 「うっわ、一桁ってヤバくない?」 「君もじゃん!!」 思いっきり引いた声が出てしまって怒られた。 いや、うん、ごめん。
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