盛夏

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「私、十五が好きなんだー」 「へえ」 そして、話していくうちに分かったんだけど、彼女はやたらと十五が好きだった。 持っているシャーペンや鉛筆は十五センチのものだし、おやつは十五時十五分に食べるらしいし、持っている靴は十五センチのヒールなんだけどこの間コケたらしい。 言わなかったけど、アホだと思った。言わなかったけど。 他にも、身長が百五十五センチで十五が入ってて嬉しいとか、この手帳は縦の長さが十五センチなんだとか、誕生日が九月十五日だとか、十五にまつわる話をたくさん聞いた。 そんな調子だから、数学で分からなくなったら一と五を交互に書いていくらしく、見せてもらった解答欄はほとんどそればっかりで。 二桁な気がするときは十五。三桁なら百十五を書くらしい。どうしても変になるときは気分と言っていた。 俺はいやいやまさか冗談だろう、半分くらいは盛ってるだろうと信じたかったんだけど、彼女はどこまでも真剣に毎回十五を書いた。 ……いや、駄目だろ。 マーク式ならともかく記述式で、なんで一と五を交互に書いて点が取れると思うんだよ。数学なら途中式書けよせめて。
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