盛夏

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「あっ」 「何、どうした?」 筆箱をひっくり返した彼女が、問題とにらめっこしている。 「定規忘れた……! 仕方ない、手で……!」 あまつさえそんなことを言い出したので、慌てて止めた。 アホだアホだとは思ってたけど、本当に何を言ってるんだこのアホは。 「いやいやいや、大雑把すぎるだろ。なんで手でやるんだよ。どう考えても無謀だろ」 「無謀じゃないよ!」 自信たっぷりに手のひらを開いた彼女は、俺の定規を机の上から奪って、ドヤ顔で自分の指に当ててみせた。 「私の手って、親指と小指を開いた大きさがぴったり十五センチなんだ。だから大丈夫。ほらね」 「え、うわ、ほんとだ」 「でしょ。だから私、十五が好きなんだー」 ……ええー。そうじゃないかとは思ってたけど、十五が好きな理由がしょうもなさすぎる……。 自慢げな彼女の手は、本当に十五センチぴったりだった。 すごい。 すごいけど、でも問題をよく考えてほしい。全然大丈夫じゃない。
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