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それ、作図だぞ作図。
「目盛りがないのに指で作図するのは無理だろ」
まさか、指の関節も何かしらぴったりな長さだとかじゃないだろうな。
ジト目で苦言を呈した俺に、彼女はハッとして、握りこぶしを作った。
「気合いで……!」
「いや、俺の定規貸すからちゃんと測れよ……」
なんで借りるって発想にならないんだよ。十五センチを基準に九センチを測れるわけがない。
真っ直ぐに直線を引くのは教科書とか下敷きとかノートとかの端を使うにしても、やり直し必須である。
そして、それに俺が付き合わされるに決まっている。
「えっ、いいの? ありがとう!」
「……どういたしまして」
いいも何もない。ついでに言うと、貸さないわけもない。
よく見ておいて、何かあったらすぐ貸せるようにしておこう……。
ぐったりした気分で定規を貸しながら、作図問題に区切りがつくのをじりじり待ったのだった。
終始そんな調子だから、分からないとすぐ適当に埋める彼女に教えるのは、本当に本当に骨が折れた。彼女はあくまで真剣なので、怒るに怒れない。
でも、少し楽しかったのは事実だ。
そう。
俺は、補講が、十五が好きな彼女と話すのが、楽しかったんだ。
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