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青年と龍
しゃっしゃっと、小気味よいリズムで砂利道を竹ぼうきで掃く音がする。
「なあ坊主、毎日毎日ご苦労なことだな。」
「……。」
変わらずしゃっしゃと竹ぼうきが砂利道の上を走る。落ち葉がどんどんと集まり、すっかり綺麗になっていく。
「ふう……。」
汗をぬぐった青年は、雲一つなく、そして容赦なく照り付ける日差しを見上げる。また少しだけ移動して、また砂利道を竹ぼうきで掃く。少しずつ、少しずつ綺麗になっていく。常緑樹の多い神社の中とはいえ、落ち葉が全くないわけではない。丁寧に掃いていく青年の姿を見て、参詣に来たであろう老若男女が「お疲れ様です」と声をかけていく。
「どうぞ、よくいらっしゃいました。ごゆっくりとお過ごしくださいね」
声をかけてくれる参詣者に、にこやかな笑顔で言葉を返していく。
「おーい。聞こえているんだろうが。無視するでないわ」
「……もうちょっと待ってくださいってば」
青年は、彼の上に浮かぶ龍の姿をした何者かにぼそりと声をかける。
すぐ近くを通った参詣者が、不審げな目を向けてくる。その目をニコリと擬態語がつく笑顔でやり過ごす。その参詣者を見送り、声が届かない場所まで行ったところで龍を見上げる。
「もう、水神様! 参詣者の方が近くにいるときは声をかけないでくださいって、いつも言っているでしょう!」
「だって暇じゃし。仕方なかろうよ。人の子のことなんぞ気にするのはとうの昔にやめたわ」
「そんなこと言っているから、ここ最近参詣してくれる方の人数が減ったんじゃないですか!?」
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