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「ぶつかった上にこんな風に親切にしてもらって……ありがとうございます」 「いいの。女の子が泣いているのに無視するなんてひどいこと、できないから」 「そんな、私」  声にならないのか、肩を震わせて俯く。どうやら何かあったようだ。道を尋ねようと思っていたけれど、泣いている少女を放っておけない。見れば見るほど、祖母に似ているのだ。早くと急かす気持ちを押し殺す。  私は少女の背中を撫でた。 「ごめ、な、さっ」 「いいから! よければ相談に乗ろうか? 話したら落ち着くかもしれないよ。嫌なら聞かないけど、自分ばっかり責めちゃだめ」  少女はややあって、口を開いた。濡れた頬が痛々しい。 「お姉さんは、都会から来られたんですよね。ずいぶんと、その、珍しい恰好をしていますし」 「えっ、そうかな? まあ、都会から来たかな?」  そんなにおかしい恰好だっただろうか。自分の姿を確認してみたが、私くらいの年齢ならば普通の格好だ。むしろ、かなり控えめだと思う。ただ、学生からしてみると派手に見えるのかもしれない。  私の格好のことは置いておいて、少女の問いかけにぎこちなく応える。 「やっぱり、都会って美人な女性がいっぱいいますか!? 帰ってきたくなくなるほどですか!?」 「もしかして、好きな人が行っちゃう、とか?」 「……幼馴染なだけで、別にそんな。抜けているところがあるし、だから、私」  頬を真っ赤に染めて、ぎゅっと制服を握りしめる少女は可愛かった。恋する乙女のなんと初々しいことか。なんて、私もまだ若いのだけれども。恋人のこの字もないので、ドキドキする。
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