告白をする日

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 雛子はすとん、と地に足を下ろして「ぷう」と息を吐く。ぱたぱたと制服の乱れを直すその様子を眺めているとまた泣けてくる心地だ。  一体全体、何がどうしてこんな子に育ってしまったのか。ぎらぎらと見た目にド派手で甘ったるい匂いが近くに立っているだけでかなり強烈である。  小桜雛子は現在近所では例を見ない程のド不良である。  おばさんは挨拶する度目頭を押さえて泣きそうな顔をしているし、時折真夜中になっておじさんの怒鳴り声が僕の部屋にまで響いてくる事がある。尤もそんな夜は決まってその前に雛子たち不良グループの嬌声が深夜の住宅街に喧しくこだましているのだが。  ああ、この滅茶苦茶に頭がおかしい片想いの僕だって泣けてくるぞ。仲がいい筈の妹は極々普通の中学生であるというのに。本当に何故あの無邪気な笑顔がこんなにけばけばしく変わってしまうのだろう。  しかし、雛子はそんな僕の様子に構ったり気付いたりする素振りすらなく、そこだけ昔の面影を濃く感じさせるあどけない調子で口を開く。 「で、なんで急にこんな事してんの?あたし達」 『急に』だって? 何が『急に』だ。  雛子にとって突然であっても僕にとっては全然突然などというものではない。 もうずっと以前。半年も前の雛子が中学部に入学してきた時からやめさせようとは思っていたのだ。けれど、意気地のない僕にはそれが出来なかった。  そう言えばあの頃満開でぱらぱらと花弁を散らしていた桜は今日、一面に紅色の葉をつけていたな。夏には目立たない桜が、秋深まればまた静かに僕たちの目を楽しませてくれる。  まだ拳に感触が残っている。  運動に精を出してはきたが人を叩いたのは初めてである。漫画で読む様に拳は実際にじんじんと痛い。小指の方が何だか赤く腫れあがってきた様だし疼く感じがする。  それほど強烈にやってしまった。絶対に喧嘩してはいけない相手に対してだ。
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