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何台ものバイクのけたたましい音が鳴り響き、続々と校門の前に停まり始めた。
どれだけ仲間を呼んでるんだ。僕と雛子たった二人の為に。
部活動に汗を流していた生徒達もとっくに異変に気付いている。校門から距離を取る形で僕達二人を遠巻きに離れていく。職員はあとどれくらいで来てくれるだろうか。いや、来たところで学校を出てしまったり、明日になればこういう揉め事に終わりはないんだ。
どうしよう。
ぽたぽたと冷たい汗が全身を伝っていく。
だが、無意識にきゅっと握っていた雛子の左手の温かさに我に返った。
僕の理想とは全然違う。けばけばしい普通の男なら誰でも敬遠するような雛子はやっぱりにこにこと笑っている。
雛子。
どんな事してたって、どんな格好してたって、この兄ちゃんはやっぱり・・・。
「あたし、戻るね」
雛子が不意に僕の手を解こうと腕を引いた。
「ほら、友達にはあたしが言っとくから」
あたしが言っとく!?そんなこと・・・。
僕はもう一度強く雛子の手を握り返した。雛子が一寸驚いた様に僕を見る。
「なあ、ずっと言いたかった事があるんだ」
雛子が馬鹿みたいなマスカラの目を大きく見開く。こうして見ると青のシャドウは結構好みかもしれない。あと、実はバニラの香りも。
「・・・何?」
校門にどっどっどっど、とエンジンを乱暴にふかせながら見るからに本当にガラの悪い男達がずらりと並んでいる。グラウンドで汗を流していた生徒達は怯えた様子で、固唾を飲んで校舎側から僕ら二人と男達を見比べている。校庭の真ん中に、やっぱり僕ら二人だけが手を繋いで立っていた。
もういいだろう。なあ、死んじゃうかもしれないし、もういいだろう僕。変態でもロリコンでも軽蔑されてももう何でもいいよ。きっと最期かもしれないんだ。
僕はすうっと息を大きく吸い込んで腹に溜めた。
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