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「そ、それより話ってなんですか? 」
「そうだった、ちょっと待って 」
そう言って先輩は下を向いてしまった。
「どうしたんでか先輩? 」
いくらか深呼吸をして顔をあげた先輩の顔はリンゴのように真っ赤に染っていた。
「まず、白崎が好きだ」
今なんて言った?。
戸惑う私が聞き間違いかもしれないと先輩にもう1度と尋ねる前に続ける。
「俺は夢がある。全国優勝なんかじゃない。もちろん全国優勝はしたいし、なんかとか言ったら悪いかもしれないけど、そうじゃなくて。俺はプロのサッカー選手になりたい 」
赤面した顔はそのままだが、初めは詰まり詰まりだった声が最後の方は真っ直ぐな声になっていた。
「前もミーティングで話したけどサッカーは、本当にすごいと思うんだ。糸を通すかのような繊細なパスは世界を1つに繋げ、ゴールの決まる瞬間は地震が起こるほどに世界を沸かす。あのピッチと言うなの戦場で戦う戦士達は、ボール1つで世界に夢を与える。俺は、俺のプレーで世界に夢を与える、そんな選手になりたい 」
この言葉はあの日、県大会決勝のミーティングで先輩が皆に語った言葉だった。
先輩の熱くどこまでも真っ直ぐな想いに私は初めてサッカーを見た時と同じぐらい、いや、それ以上に心が踊り熱くなっていた。
「だから白崎、こんな俺でよかったらこれからも隣で支えてくれないか?。 」
「はいっ。私、私も先輩の夢を隣で見て、支えたいです 」
本当なら涙しながら歓喜で声を詰まらせながら返事をしているだろう所を、私は嬉しさを忘れるほど興奮しきっていた。
大好きな先輩と大好きなサッカーの夢を一緒に見る、こんなにも幸せで心躍ることはあるだろうか。
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