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カラスの祭り 二日目
技術室の天井では、古めかしいエアコンが唸り声をあげながら、冷気を吐いている。僕はそれを直に浴びて、また一つ身震いをした。夏期休暇中は、美術室のある本館が閉鎖されるため、代わりにこの場所を部室として使わせて貰っているのだ。美術部員の殆どは女子で、男子は僕を含めた四人だけ。僕ら四人はいつものように固まって、だだっ広い机にスケッチブックを広げながら、雑談をしていた。
前方から田村と藤森が、隣の杉本のスケッチブックを覗き込んで、吹き出した。
「杉本、これ何?」
「それ、ウチの婆ちゃん。」
「お前のお婆ちゃん、バケモンじゃねぇかよ!」
よくある光景だ。杉本は、その画力……いや、画風の独特さから、皆から笑いの種にされることが多い。そんな時、いつも彼は「時代がまだ俺に追いつけてねーんだな。」とか言って、強がるのだ。そんな彼と僕は、異様に気が合った。話してみると、彼は美術に関する知識に富んでいて、本当に絵が好きなのが伝わってくる。
「僕、これ、お前の『祖母と僕』シリーズで一番好きかも。」
そう言うと、杉本は嬉しそうに笑った。
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