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[今日行くから。お風呂とご飯よろしく。]
仕事終わりの職員ロッカーで、スマホを開けて私、宮坂寧々(みやさか ねね)は小さく溜息をついた。送信元は秋吉伊都(あきよし いと)。保育園の頃からの私の幼馴染みだ。
「寧々ー!今日、みんなで飲みに行くって言ってるんだけど来る?」
背後からの声に慌ててスマホを鞄に落とす。同期の澤田優香(さわだ ゆうか)がにこにこっと微笑んでいる。
「ごめん。今日はちょっと無理。」
「そっか。残念。せっかく美味しいお店を見つけたのに。」
本当は誘いにのった方がいいのに。私の脳裏には伊都からのメッセージが既にこびりついている。
[今日行くから。]
何時に?仕事が終わるのはいつ?と聞きたいけど、どうせ返信なんてない。伊都は私に対しては自分の要件しか連絡してこない。
それでも……私は同期の誘いを断ってですら、伊都の帰りを待つのを選ぶ。断ったらもう伊都がうちに来てくれないような気がするから。
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