多忙な二人

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夜遅くになっても伊都は返って来なかった。 伊都のばーか。ばーか。ばーか。 子供染みていると思いながら、真っ白な紙にそう書いてやった。 もうすぐ誕生日なんだよ?今年は何が欲しい? 続けて書いた。 私は伊都と一緒にいる時間が一杯あればいい。 さらに続けて書いて、スマホを手にした。 [明日会えます。私は研修の課題があるから会うんです。だから変な絡みはやめてください。] 河邑さんに流されたりしたくない。何度も伊都から逃げたから。もう逃げて傷付けたくない。伊都が傷付くなら私が傷付く方がいい。モデルみたいな女の人と仕事をするのも我慢する。 さっき愚痴を書いた紙はくしゃくしゃに丸めてゴミ箱に捨てた。 気付いたら0時を過ぎていた。もうすぐ家に着くと伊都から連絡があった。シチューは食べたいと。 コンロに火を着けて青く揺れる炎を見つめる。ぼんやりと動く何かを見つめていれば、少しは余計なことを考えなくて済む。
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