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時計の針が18時半を指した。今日は昼間は忙しいからと河邑さんに言われて、仕事後に学食で落ち合うことになった。
学食も昼に比べると、大学に残っている学生も少ないこともあり閑散としている。例え話し合いが長引いても、混んでいるから席を譲らなきゃという心配はない。
この間、服装に関して色々と言われたものの、今日は膝丈のフレアスカートを着た。やはり物理的にバイクに乗れない状態で来た方が、口では色々と言われても乗らないですむ。
男の人と密着するような状態は避けたい。恋愛感情があるとかないとか関係なく。だって私は大崎さんが伊都の肩に触れるだけで嫌だった。だから、自分がされて嫌なことをしたくない。
「さっさと最後の課題を片付けましょう。」
この人のタチの悪い冗談にも付き合えば付き合う程に疲れがたまる。
「その前にスマホ、光った。」
「えっ?」
河邑さんが私の鞄を指差す。液晶に伊都からのメッセージの最初の部分が表示されている。
[仕事、キリのいいところまでした……]
読まなくても分かる。これは残業の連絡だ。
「読まないの?彼氏さんからでしょ?」
「いいの。いいから最後の課題をしましょ。」
「あっ、そう。最後のは私達が働いていく上で求められているものだけど……。」
私達に求められるもの。ただ漫然と働くのではなくて、何ができるのか。
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