いつもの二人

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行きが登れば帰りは下るということで、今日も長い坂を下り駅に着いたところで、駅に直結したスーパーで、私は缶ビールや牛肉のたたき、アボカドなどの野菜をカゴに投入した。 伊都はご飯を食べながらよくお酒を飲む。私も付き合うことは多いが、伊都のお酒の強さには到底勝てない。そんでもって魚より肉派の肉食野郎。そしてそれは、食生活だけじゃない。日常生活でも。 今まで何人もの女の子を食い尽くしてきたのだろうかと思う。身長178センチ。大学まで水泳で鍛えた体。男のくせに小顔だし目鼻立も整っている。そのうえちょっと触りたくなるような猫っ毛の髪。こんな男に言い寄られたら「一晩ぐらい。」って思いたくもなる。しかも……セックスが上手い……。 「はぁ……」 レジの店員が心配そうにこちらを見るくらいの重い溜息が出た。ずるい ずるい ずるい。伊都はずるい。いつも自分勝手。週末はだいたいどこか女の家に行っている。金曜日か土曜日どちらかは。 そして予定のない日はいつも私の家に来て、当たり前のようにご飯を食べて、お風呂に入って…… 思い出しちゃった……。 伊都に触れられると理性が抑えられない。伊都にキスされたいって私はどこかで思っている。キスだけじゃ足りないって。 だって、私はずっと伊都のことが好きだったから。そして、それを無理矢理、封印したのだから。
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