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「なんでもっと早く教えてくれなかったんだよ。」
いつもより随分とトーンの低い自分の声を、「あぁ、怒ってるんだなぁ」と、他人事のように聞いていた。
気持ちを新たに迎えた新学期から時間が経つのはあっという間で、ついこの間まで桃色絨毯が敷かれていた通学路は鮮やかな緑色に取って代わっている。
夏休み前、昼休みの屋上。
まだ梅雨が明けそうにないと思っていた空は青く澄み渡っていて、所々に薄く伸びる雲は雨を降らすことなどないのだろう。
焼けたコンクリートがじりじりと照りつけて、シャツ一枚でも暑いくらいだ。
気をしっかり持たないと意識が飛んでしまいそうな暑さでは誰も屋上を使おうとは思わないようで、人気がない…というよりも、俺たち二人しかいない。
だからこそ、「やっぱ今日は他の所で食べよっかぁ」と扉に向かって歩き出した白川をこうして引き留めているわけで、胡乱気に振り向いたソイツはただ一言、抑揚のない声で「ごめん」と口にしただけだった。
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