ピアスとだるま

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「(また次の休憩時間に来るとすっかぁ…)」  サトセンはのんびりとした性格なので、レポート提出が少し遅れたくらいでは文句を言うことはない。…そういった所が、ああしてザマスモトに目をつけられる原因なのだろうが。  急ぐことでもないかと、くるり踵を返そうとした時、 「佐藤先生のクラスの白川ですがねぇ、」  足を止めたのは、友人の名前をザマスモトが口にしたからだった。  脱色した茶髪と薄いメイク。目を引くほど派手ではなく、かといって地味でもない。  桃華なんて愛らしい名前の癖に、さばさばとして少し男勝りな性格。  そして、ひょんなことから昼飯を一緒に食うようになった相手。 「(白川の奴、何かしたのか?)」  頭の中に、クラスメイトと呼ぶには惜しい親友の顔が浮かんで眉を顰める。    ザマスモトの口から直接名前が出る時は、あまり良い話題ではない。  品行方正な生徒なら別だが、俺も白川も模範生にはほど遠いからだ。  そもそも指導主任が白川の名前を覚えていた事が意外で、だから、もし何かお小言があるのなら先回りして白川に教えてやろうとか、そんな思いで一度背けた視線を戻した。 「留学の話を受けるなら、早めに考えておいた方が良いんじゃないですか?」 「はぁ、」 「他に希望者が居ないわけでもないですし、色々と準備も必要でしょう。」 「まぁ…一応、聞いてはみますが…。」  …一体、あの教師たちは何を言っている?  職員室の入口で振り向いた体勢のまま、サトセンが曖昧に返事をする姿を眺める俺の頭の上には、クエスチョンマークが数えきれないほど浮かんでいた。
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