0人が本棚に入れています
本棚に追加
「(また次の休憩時間に来るとすっかぁ…)」
サトセンはのんびりとした性格なので、レポート提出が少し遅れたくらいでは文句を言うことはない。…そういった所が、ああしてザマスモトに目をつけられる原因なのだろうが。
急ぐことでもないかと、くるり踵を返そうとした時、
「佐藤先生のクラスの白川ですがねぇ、」
足を止めたのは、友人の名前をザマスモトが口にしたからだった。
脱色した茶髪と薄いメイク。目を引くほど派手ではなく、かといって地味でもない。
桃華なんて愛らしい名前の癖に、さばさばとして少し男勝りな性格。
そして、ひょんなことから昼飯を一緒に食うようになった相手。
「(白川の奴、何かしたのか?)」
頭の中に、クラスメイトと呼ぶには惜しい親友の顔が浮かんで眉を顰める。
ザマスモトの口から直接名前が出る時は、あまり良い話題ではない。
品行方正な生徒なら別だが、俺も白川も模範生にはほど遠いからだ。
そもそも指導主任が白川の名前を覚えていた事が意外で、だから、もし何かお小言があるのなら先回りして白川に教えてやろうとか、そんな思いで一度背けた視線を戻した。
「留学の話を受けるなら、早めに考えておいた方が良いんじゃないですか?」
「はぁ、」
「他に希望者が居ないわけでもないですし、色々と準備も必要でしょう。」
「まぁ…一応、聞いてはみますが…。」
…一体、あの教師たちは何を言っている?
職員室の入口で振り向いた体勢のまま、サトセンが曖昧に返事をする姿を眺める俺の頭の上には、クエスチョンマークが数えきれないほど浮かんでいた。
最初のコメントを投稿しよう!