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◇
突然現れた目の前の光景は、衝撃的なものだった。
固いアスファルトの上に、ごろりと横たわる一人の少女。
その身体を中心に、ドクドクと赤い水溜まりが広がっていく。
見るも無惨な光景を目の当たりにして、私はそこからピクリとも動けずにいた。
「きゃああああ!」
「誰か早く! 救急車を呼んで!」
そんな騒ぎの中、私以外にもやけに落ち着いてその光景を眺める、一人の少年がいる事に気付いた。
鬼島くん……!?
そんな私に向こうも気付いたのか、彼はこちらを一瞥すると、その場からくるりと踵を返した。
私は慌てて彼の後を追う。
きっと彼は何かを知っているに違いない。
鬼島くん! ちょっと待って!
私は、がむしゃらになってその後を追い掛けた。
「あーっ! 聞こえない聞こえない! これは空耳だ!」
事もあろうか、両耳を押さえて私の声を遮断しに掛かっている。
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