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この辺りは学園都市になっていて、幾つかの学校が近距離に点在している。
それ故に、電車も歩道もそれなりに込み合い、信号待ちをする生徒が横断歩道ギリギリでごった返す。
そんな中、私は挙動不審に目だけを動かし、キョロキョロと辺りを見回していた。
「あ、未散ちゃん……もしかして『あの人』を探してるの?」
愛美が、こそっと私に耳打ちして来る。
私の顔は、思わずぼっと赤面した。
あの人……名前は槙田伸次くん。
私が密かに思いを寄せている他校の生徒だ。
「うん……この間やっと告白できたんだ。まだ返事はもらってないから、どうなるかは分からないけど」
「え……そうだったの? あー……上手くいくといいね」
「あはは、ありがとう。ダメ元だから、一応覚悟はしてるんだけどね」
そんな他愛のない話をしていた矢先だったのだ。
ちらりと信号機に目を奪われた、ほんの僅か。
その隙に、私は――――
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