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◇
『誰かに背中を押された……で、気が付いたらこの有様よ』
「その誰かを教えて欲しいと、そういう事か?」
誰かに故意に押されたなんて、本当は考えたくない。
けれども、あれは明らかに偶然とは思えなかった。
周りでふざけているような人はいなかったし、背中に残った感触は……
『あれは確かに手のひらの感触だったわ。でも、男か女かが分からない』
「男と女とじゃ、明らかに大きさに差があるだろう」
『それが分からないからあんたに聞いてるんじゃないの!』
そう怒鳴ると、私ははっとなった。
これは単なる八つ当たりに過ぎない。
『ご、ごめん』
「別にいいよ。まあ、気持ちは分からなくもないから」
こんな私に気を遣ってくれているのだろうか……何だかとてつもなく申し訳なく思った。
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