好きなひと-彼女Side-

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好きなひと-彼女Side-

 「あ、笑った」  教室から見下ろす運動場。  体操着のお腹の方をつまんで、内側に風を送り込んでいた彼は、どうやら走り高跳びの順番待ちをしているらしい。  持て余している時間を楽しむように、周りのクラスメイトと何か言葉を交わしては、口を開けて笑う彼の肩には、普段から仲が良いらしい友人の腕が乗せられている。  「…いいな」  男の子同士だと、あんな風に気軽に触れ合えるんだ。  そんな事を考えながらぼんやりと、その景色を眺め続けていたら、  「え?」  突然、彼と談笑していたクラスメイトの一人が、私の教室の方を指差した。  彼がこちらを見上げる。  ドキリと、胸が高鳴るのを自覚したと同時に、彼が目を細めて手を振ってくれた。  「うそ…」  私のクラスは古典の授業中。  解釈を黒板に書き綴る先生は完全に背中を向けていて、  「…よし」  教科書に隠れて小さく手を振り返す覚悟を決めて、改めて運動場に視線を戻した時にはもう、彼はこっちを見ていなかった。
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