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「おはよう」
玄関を出た私に気付いた彼は、直ぐに持っていたスマホから目を上げて、優しい笑顔で迎えてくれた。
白のTシャツにカフェオレ色のパンツ、その真ん中、腰に巻いた淡いピンクが映えるチェック柄のネルシャツが可愛い。
…髪、
「…切ったの?」
「うん、ちょっとだけね」
今まで見たいに、伸びたから切ったって感じじゃなくて、セットする為に計算してカットされたって感じのヘアスタイル。
「変?」
「…カッコ好い、です」
バイトを始めて、私が知らない世界に生活範囲を広げた彼。
ほんとは、少し寂しい。
これも、声にはしないけど。
映画は私の好きなアメリカンヒーローもの。
このシリーズが始まった時からずっと一緒に観てるけど、今日は右側の方が映画よりも私の関心を誘っている。
彼女になってから、初めての映画。
二人の間にある、いつもより大きなポップコーンは二種類の味で分かれていて、彼はホットコーヒー。
私はウーロンティ。
「…集中できない?」
不意に耳元で囁かれれば、胸がギュッと痛くなる。
「…大丈夫」
画面を見上げて、バレないように深呼吸。
暗くて良かった。
泣きたいくらい、顔が熱い。
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