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――――――
―――――
――――――あ、まただ。
映画館が入っているショッピングモールでお気に入りのアクセサリー屋さん。
キラキラ光る誕生石が使われたペンダントを見ていると、彼のお尻のポケットでまたバイブが振動する気配がした。
取り出して見たりはしないから、私もずっと気づかない振り。
"バイトしてると急なシフト交換とか連絡入るし、ある程度スマホを気にするのは仕方ないよね。頻度多いと、浮気か! って問い詰めたくなるけど"
友達の言葉を不意に思い出した。
今日の為にバイトの時間を調整したって言ってたから、急ぎの連絡かも知れない。
「トイレ、行って来るね」
タイミングを見計らって、傍を離れる。
優しい彼は、そうしないとスマホを見る事はしないから。
トイレの横にあるパウダールームで、さっき食べたポップコーンがついていないか笑顔をチェック。
そして全身鏡で、髪型と後ろ姿までしっかりチェック。
仕上げに最近買ったばかりのリップをつけた。
長身の彼は、どこに行っても人目を引くから、彼の隣にいる為に、きちんとしなくちゃって気合を入れる。
「よし」
気持ちを新たに出て行くと、女子トイレの入り口近くのソファに座っていた彼は、何だか難しい顔をしていた。
というより、ほんのちょっと、機嫌が悪そう。
それでも、私を見つけると直ぐにいつもの笑顔に戻ってくれて、
「何かあったの?」
思わず訊いた私に、彼は更に目を細める。
「あったけど、今全部吹き飛んだからいい」
意味が解らなくて首を傾げる。
「可愛い」
愉しそうに言った彼に、何故かうまくあしらわれたような気がして、今度は私が少しだけ不機嫌になる。
そんな私の機微を、小さい頃から一緒の彼は直ぐに読んでくれて、
「――――――手、繋いでもいい?」
大きな手を、私へと差し出してくれた。
たったこれだけの事で、機嫌は急浮上。
「うん」
舞い上がって手を伸ばす。
その時、
「あ、凄い偶然!」
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