クッソ失恋野郎、乙である。

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結局、その言葉に足を捕まれた私は彼を追うことが出来なかった。 何故言わなかったのか、答えは簡単。 岬に口止めされていたからだ。 そして岬が口止めした理由、今なら分かる。 恐らく三奈のことが好きだったのだ、岬は…… 私が無頓着なアドバイスを出したから…… あまりにも馬鹿すぎた……あまりにも適当に考えすぎた。 普通にしていたらこんな簡単なことすぐに気付いた筈だ。 今何を思っても、残った事実はただ残酷で、世界で同時に二人が失恋したってことだけだった。 「三奈……」 場所は近くの川辺だった。 あれから私は三奈を探すか迷ったが、このまま終わるのはあまりにも辛すぎると思った。 そして結果、ひぐらしの鳴き声が煩い夜遅くにまでなってしまったが、三奈を見つける。 「紗世か……」 「……そうよ、紗世よ」 私はそう答えたが、三奈は言葉を返そうとしない。 「隣、いいかしら?」 「……構わねえけど俺よりちょっと後ろに座れ」 何故……と聞こうとは思ったが、彼の頬を伝って見えるものを見たときにそんな気は失せた。 じゃりっ、と不快な音が聞こえる。 直に砂利の上に座ってるわけだ、お尻が痛い。 暫くの間、場は虫の合唱しか聞こえなくなり、私も三奈も言葉を発することはなかった。 そしてその状況を先に破ったのは私、ではなく三奈の方だった。 「間に合ったんだけど……遅かったわな」 「……そう」 「……詳しく聞かなくていいのか?」 「聞きたくないもの……」 「……俺があいつに追い付いたのは、あいつが告白する前だった。 そりゃ天啓かと思ったさ、まだ間に合うってな…… でも……岬は言ったよ。 今はもう私、先輩のこと好きになっちゃったから……ごめん だってよ」 聞きたくないって言ったのに……彼がどうそれを受け取ったのかは知らないが、明らかに事実とは違うのだろう。 私はただ、好きな人の失恋話なんて聞きたくなかっただけだのだ。 「……宿題、手伝いましょうか? まだ終わってないでしょう」 「お前……俺あんな酷いこと言ったのに……」 「普通そう言うわよ、私だって自分でバカなことしたって気付いてる。 謝るわ」
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