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時は2時間前に遡る。 男の名は佐藤一郎。19歳、学生。裕福でも貧乏でもない、ごく普通の家庭に生まれ育った。「一郎」という名は長男であることから由来している。長男だから一郎、というのは安直すぎるかもしれないが、一郎は自分の名を気に入っていた。父と母、そして3歳離れた次郎、5歳離れた三郎を弟に持つ、5人家族である。小中高と地方の公立学校を卒業し、華の大学生としてはるばる上京した彼は、都内にアパートを借り一人暮らしをしている。都内の私立大学に通う一郎は、日常に退屈していた。大学に入学した当初はこれから始まる生活に胸を躍らせていたものだが、それもいつしか、起きては学校に通い、アルバイトをし、家に帰るだけの日々の繰り返しになっていた。所属していたサークルは人間関係の悪化で辞めざるを得ず、特に友人が多いわけでもなく、これといって目標があるわけでもなかった彼は、暇な時間はネットを見て過ごすという日々を送っていた。     
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