報・連・相

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 天使に変な虫が近づかないよう、これまでかなりの努力をしてきた。小学校から大学まで私立の女子校に入れ、バイトは知り合いの家での家庭教師のみ。勤めも母校の事務職に――妻は過保護だと呆れていたが、娘は素直に従ってくれていた。  娘の長所は素直、そして、単純、だ。私が作る特製カレーを食べると、どんな時も笑顔になる。あまり悩まない性格は羨ましくもある。  今晩は久しぶりにカレーを作ってやるか――。  そんなことを考えているうちに、私はいつしか眠りに落ちていた。 「お父さん、着いたよ」  寝ぼけ眼で車から降りた途端、潮の香に包まれ、私は覚醒した。「海の日」だから海までドライブ。不自然ではないが、なんだか嫌な予感がする。  そもそも、海は私の主戦場だ。故に、私は大事な話をする時は必ず海を選ぶ。プロポーズも、転勤が決まった、と妻に告げたのも海だった。  妻もそうだ。妊娠を告げられたのも、今度の転勤は単身赴任にして、と告げられたのも海だった。  もしや、娘も? 留学でも言い出すのだろうか。本人の意思は尊重したいが、行き先と期間による。  そんなことを考えながら突堤を歩いていると、娘が不意に立ち止まった。 「お父さん。私、結婚するね」  一瞬、波の音が聞こえなくなるほどのショックを受けたが、私は瞬時に立ち直った。 「どんなやつだ? どこで出会った? ナンパか、コンパか? いい加減な奴は許さんぞ」 「お父さんが紹介してくれたから大丈夫でしょ」     
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