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怪奇現象が起こった場所には手紙を握りしめた少女が現れるらしい。犯人は現場に戻るというぐらいだから、少女が怪奇現象を起こしていると言う話が広まった。
「まさか、その少女が握りしめてるっていう手紙がこれとか言わないよな?」
「そのまさかだよ」
「裕翔、今時怪奇現象なんて流行らないぞ」
科学が進んだ今、怪奇現象がなぜ起きるかは解明されつつあった。
「まあ、信じるも信じないも駿次第だけど」
そう言って屋上から裕翔は出て行った。
キンコーンカンコーン
チャイムがなる中、駿は手紙を握りしめたまま動けなかった。
夜、駿は再び学校に来ていた。
「ない、ない、ない、何処にもないの」
少女の声が聞こえて来る。裕翔の話は本当だったらしい。
「手紙が…ない」
きっと少女はこの手紙を探しているのだろう。
声が聞こえる方へと歩いて行く。
ピアノが勝手に鳴り出すという音楽室。その扉を開ける。
そこには少女がいた。
「ないの」
少女は駿に気づきそう言う。
「手紙のことか?」
駿が問いかけると少女は無言でうなずく。それを見ると駿は手紙をポケットから取り出しながら少女に近づき、差し出す。パアッと言う効果音がつきそうなほどの笑顔を見せ手紙を受けとる。
「ありがとう!」
ああ、喋るんだ。
それが駿の感想だった。
「聞いてもいいか?その手紙が何なのか」
「…うん」
少女は話し出す。
「これはね、ある男子に貰ったの」
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