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従兄のよーちゃんに恋をしたのは、僕がまだ3歳の時だった。
そのことを考えると、人の本能ってすごいと思う。
よーちゃんはアルファで、僕はオメガ。
ちっちゃくてまだ性別検査もしてなかったのに。
僕は自分がオメガなんて自覚もない時に、よーちゃんのことを好きになった。
よーちゃんとは、祖父の家で出会った。
母が、のちに僕の妹となる双子を妊娠したのがきっかけだった。
臨月に入ると二人の赤ちゃんが育つお腹が大きくなりすぎて、とても僕の面倒まで見れなくなったせいだ。
そんな訳で僕は、出産予定日の1か月前から祖父の家に預けられた。
そこに、よーちゃんがやってきた。
その時はよーちゃんが従兄とか、ぜんぜんわかってなくて、一緒に遊んでくれる優しくてかっこいいよーちゃんのことが大好きになった。
一緒に過ごしたのは、ほんの2、3日のことだったろう。
だけど、僕はよーちゃんと遊びたくて、祖父の家にいる間中「お兄ちゃんはいつ来るの?また遊びたい!」と、何度も祖父に強請った。
だけど僕が次によーちゃんに会えたのは、僕が8歳の時だった。
その日は祖父がちょうど60歳の誕生日で、大きな会社の社長をしていた祖父のために親族や取引先の重役たちがお祖父ちゃんの家に大集結していた。
大きなお祖父ちゃんの屋敷が、親しい親族ばかりでなく見たこともない人たちで埋め尽くされていた。
2年前に生まれた弟の希空と、5歳の双子の妹美玖と沙紀は、ま新しいフォーマルな服を着せられて窮屈そうだった。
でもこのころすでに発育がよく簡単な算数の問題を解けるようになった希空はアルファの片りんを見せていて、むずかりもせずに両親の傍らで招待客らに「おいしょがしいなか、よーこしょ、おいでくだしゃいまちた」と舌足らずながら一人前の挨拶を披露して、愛嬌を振りまいていた。
そんな中、僕は要人叔父さんから少し離れた位置に執事の男性と一緒に佇むよーちゃんに気付いた。
「あっ!!
よーちゃん!!」
僕は嬉しさのあまり、よーちゃんに一目散に駆け寄った。
そして、「よーちゃん、大好き!!」と言って、抱き着いたのだった。
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