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それから頼んでいた食事が運ばれてきたけれど、僕は胸がいっぱいで全然食べることが出来なかった。
希空の結婚式のお料理だって、最高級の食材だった。でも、突然のよーちゃんとの再会に動揺して、全然手を付けられなかったっていうのに。
それでも二人の時間はあっという間に過ぎて……気が付くと料亭の閉店時間になっていた。
僕は結婚式の後の取引先や親族たちへの挨拶なんかをすべて投げ出していたけど、家族に連絡しようと手にした携帯電話には、「時間は気にせず、ゆっくりと番との時間を愉しんで。朝帰りでもいいのよ? お父さんは複雑みたいだけど」という母からのメッセージが届いていた。
嬉しいような、可笑しいような気分で、それでもちょっぴり泣いてしまいそうになった。
母さんが一番、僕のことを心配してくれていて、同時に、一番本当のよーちゃんとの再会を喜んでくれていたから。
もちろんそれは、よーちゃんの人柄について公的にも信頼のできるヘリントン社のジャロウ氏が絶賛し、太鼓判を押してくれたからおかげもあるとは思うけど。
そしてその日の夜、僕はよーちゃんとともにホテルで一泊した。
というのも僕たちは料亭を出た後はホテルのロビーで深夜まで話し込み、それでも足りなくて、別れ難かった。
初めての二人っきりのお泊りに、恋愛初心者の僕としてはとても勇気を振り絞ったのだけれど。
「優羽……これからはずっと一緒だ……。
だから、焦らず行こう?」
と、よーちゃんはそのまま僕を抱いたりはしなかった。
ちょっぴり残念な気がしたけど、その後濃厚な大人のキスと軽いボディタッチのコンボを体験した僕はそれだけでいっぱいいっぱいになってしまったから、よーちゃんの判断は間違っていなかったんだろうと思う。
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