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それから時は過ぎ、僕が小学4年生になった10歳の時の話だ。
身体が大きく早熟な同じクラスの女の子が、初潮を迎えた。
昼食時間、しかもスカートが血で汚れていることに気付いた男の子の一人が大げさに騒ぎ立てたせいで、クラスメイト全員がそのことを知ることになった。
男の子たちに揶揄われた女の子を、僕はハラハラと心配しながら見守っていた。
「なによっっ!
あんただって、オメガだったら同じなんだから!!!」
「ははは、俺チビじゃねーし!!
男女じゃあ~り~ま~せ~ん~」
オメガ? 男女??
女の子と同じ?
それってどういう意味……?
女の子の生理のこともろくに知らなかった僕には、全く意味が分からない会話だった。
だけどそのことがきっかけで、クラス全員が『オメガ』という言葉を知った。
そして1週間もたたないうちに、クラスではアルファ、ベータ、オメガというバース性について、面白おかしく虚偽を交えて噂話が膨らんでいき……そして誰かが言った。
「優羽って、オメガっぽくない?」
「えっ……?」
「なんか、小さいしさ。
女の子みたいだし」
「オメガって男でも子供産むんだぜ?
キモッ!」
そんな言葉に衝撃を受けた僕は、図書館でオメガについて調べ始めた。
すると、僕はずっと男と女しか性別はないって思っていたけれど、世の中にはバース性っていうのが有ることを知った。
オメガは男性にも女性にもいるけど、ベータの男性にはない子宮が男性オメガにはあって、男性だけど子供を産むことが出来るらしい。
そのオメガと番うのが、アルファ。
体も大きくて頭もいい。
だけどアルファは、人口の2.5%しかいないオメガよりも、さらに数が少ない。
だからできるだけ良い相手と番えるように、オメガは第二次成長期を迎えるとともに、アルファを誘因するフェロモンを放ち、発情するようになるのだそうだ。
発情……生まれて初めて知るその言葉に、僕は自分のお腹をそっと押さえた。
僕はいつかよーちゃんの子供を産むのだろうか。
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