序章

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「私、勇者のマネージャーをしております、カイと申します。この度は、南ガーランドを治めております、オオトカゲのオランさまに折り入ってお願いがございまして、こうして伺った次第でございます」 「は?」  目の前に突き出された名刺には、『最強勇者エア 専属マネージャー カイ』という名前と連絡先が書いてある。つかまれていた左手の上に載せられる。 「いやあ、とても良い訓練をされていますね。予定では、半日前にはお会いできるはずだったんですが、なかなかしぶとい方々でして、時間がかかってしまいました。オオトカゲの魔物の尻尾って本当に切っても切っても生えてくるんですね」 「貴様、バカにしているのか?」  槍を握る手の力が増す。周りの重力が濃くなったのを、この男、カイも感じたはずだ。 「まさか。バカになんてしてませんよ。感心してるんです。オオトカゲなんて頭が空っぽだと思いきや、見事に統率が取れていて、そこらの軍隊よりも忠義に厚い。素晴らしいですよ。惜しむらくは、揃いも揃って全員が引き際を見誤ったことですかね」 「貴様……っ!」  槍を前に突き出す前に、カイが名刺をオランの首元にあてる。思わず、オランは立ち上がりかけた自身の腰をゆっくりと下ろした。口を開ければ丸呑みできそうな位置にカイの頭がある。けれど、一歩でも動けば自分の首がその瞬間に吹き飛ぶことをオランは本能で感じ取っていた。     
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