最恐怪談コンテスト 応募作品

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友人の唯原くんは、長野県の某大社の神官の血筋という事で、数多くの風変わりな霊体験を持っている。 怪談コンテストがあるんだけど、何か変わった話ないかな?と訊ねてみると、自らの体験を含めた、不可思議な因縁談を語ってくれた。 ―松本市の外れの、母の実家の近くに墓所があって、年に一回、墓参に訪れるんですけど、そこで不思議な出来事があったんです― 彼の神妙な顔つきに、私は身を乗り出した。 その年も、唯原くんはいつもの様に、母親と祖母の三人で、墓参に出向いた。 皆で手分けして、周囲の掃除や草むしりをしている最中、彼はそこで奇妙なものを見た。墓のすぐ脇で、五歳位の男の子が土いじりをして遊んでいる。 単にそれだけなら、どうという事は無い。 妙だなと思ったのは、その子が時代掛った和装をしていて、ぼんやりと金色に光っていたからである。首を傾げていると、不意にその男の子が顔を上げた。 人形の様に、愛らしく端正なその顔立ち。カラーコンタクトを嵌めたら、外国人と見間違うかのようなその男の子は、呆気に取られる唯原くんの目の前でにっこり微笑むと、フッと消えてしまった。 見間違いにしては、細部の印象までが、やけに鮮やかである。 いつものアレかな?それにしては変わってるなと、その時はあまり気に掛けないでいた。 墓石に花と供物を捧げ、線香を点火し、祖母や母親らと一緒に合掌、さて、引き揚げようという事で近くに停めていた車に乗り込もうとすると、すぐ傍らに、あの着物姿の男の子が立っている。 彼らと一緒に車に乗り込もうとしたので、慌ててドアを閉じたが、唯原くんの狼狽とは裏腹に、金色に光る男の子は、車のガラス窓の向こうで、愛らしく微笑んでいたという。 怖いという印象ではなかったが、あまりにも不思議だったので、帰宅してから、彼は墓地での出来事を母親に打ち明けた。 すると母親は頷いて、こんな話をしてくれた。
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