7人が本棚に入れています
本棚に追加
時の恵みの雨を降らせた神様――だから『時雨様』と言う名前になった神様の元に。
この町で生まれて、そして暮らしていた私は『時雨様』が住んでいると言われていたお社に、毎日手を合わせに行った。
会ったこともない神様にそんなことをするのはおかしい――と言われたことがある。
確かに今の時代――神様の元に足を運んで、昔の件についてのお礼を言うのはおかしいかもしれない。
でもそのおとぎ話は私が生まれる少し前の出来事の話だ。
つまり――今こうして私が自分の血を引いた孫に出会えるのは『時雨様』のお蔭と言っても過言じゃない。
いや……『時雨様』のお蔭なんだ。
そのことを娘に言ったら、鼻で笑われた記憶がある。
『神様なんて、いるわけないじゃん』――と。
我ながら悲しい子供に育ててしまったと反省するべきだろうけど。
だけど私は――『時雨様』だけは本当に実在する神様だと信じている。
最初のコメントを投稿しよう!