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「政宗様、その女をどうするおつもりですか?」
「俺が拾った物だ。どうするもしないも俺の自由だ」
瑠璃の存在をないもののように言い合いを始めてしまう二人だが、話を聞いていると、どうやら眼帯をつけた男はこの国の偉い人のようだ。
そして、先程から溜息がたえない男は、この政宗という男の家臣のようだ。
「珍しい物を集めることは構いませんが、この者は物ではなく人です」
「だからどうした。俺が拾ったのだから既に俺の物だ」
「人と物は違います!!」
次第に聞いているだけの瑠璃にも怒りが込み上げてくる。
だが今は、元の時代に戻ることが優先だと冷静に判断すると、瑠璃はその場から去ろうと口を開く。
「すみませんが、私はこれから用があるので失礼致します」
兎に角この場から一刻も早く離れようとするが、伸ばされた手に腕を掴まれ制止されてしまう。
「俺の物が勝手に何処へ行こうというのだ?」
「あのですね。ハッキリ言わせていただきますが、私は貴方の物ではありませんから!!」
「何を怒っている?この伊達 政宗の物になれるんだぞ。普通の女なら喜ぶところだ」
「はいはい。なら、私は普通の女じゃないんでしょうね。兎に角私は急いでいるので、手を放してもらえますか?」
自分が今すべきことは、元の時代に帰る方法を探すこと。
そして、何故自分がタイムスリップをしてしまったのかを思い出すことだ。
今こんなところで、足止めされるわけにはいかないというのに、何故か瑠璃の体はまた宙へと浮く。
「ますます気に入ったぞ女!やはりこの女は、俺の城に持って帰る。どんな説教も聞かんからな」
「政宗様!!」
小十郎の呼び掛けにも答えず、政宗は瑠璃を担いだまま、とある部屋へと着くと瑠璃を畳へと下ろした。
「ここは……」
「俺の部屋だ」
その言葉に身の危険を感じた瑠璃は政宗から距離を取る。
その瑠璃の姿に、政宗は声を上げ笑った。
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