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「とても綺麗ですね」
「そうだな。だがその綺麗という言葉は、無数にある星や、光輝く月に向けてのものだ」
悲しげなその声音に、夜空に向けていた視線を政宗に向けると、月の光や星々の煌めきを映した青い瞳の美しさに、瑠璃は息を呑んだ。
口を閉ざしてしまう瑠璃だったが、政宗の瞳が再び揺らいだことによりハッとする。
とても綺麗な瞳なのに、今はその瞳が悲しく見え、まるで泣いているかのような瞳を見つめていると、政宗はポツリと言葉を漏らす。
「何故この青い夜空は、星や月のように輝けないのだろう……」
政宗が漏らしたその言葉に、一体どんな意味があるのかはわからないが、悲しげなその瞳に吸い寄せられるように、気づけば瑠璃は政宗を抱き締めていた。
勝手に動いた自分の体に驚き、瑠璃は政宗からバッと離れると、すみませんとだけ言い残し自室へと戻っていく。
自室に続く廊下を歩く中、何故自分はあんなことをしたのかと考えるが答えはでない。
ただ、ああしなければいけないと思ったのだ。
それから翌日の朝、政宗は瑠璃と一緒に朝食を食べるために瑠璃の部屋にやって来ると、まとも瑠璃を担ぎ無理矢理部屋へと強制的に連れて行く。
昨日のこともあるため気まずいというのに、政宗は全く気にする様子もなく朝食を食べている。
「食べぬのか?昨夜も食さず部屋に戻っただろう」
「あ、そういえば……」
昨日の夜は何も食べていなかったことを思い出し、急にお腹が空いてくると、瑠璃は箸を手に取りゆっくりと朝食を食べる。
二人無言のまま朝食を食べ終え、瑠璃は自室へと戻ろうとするが、腕を掴まれ制止されてしまった。
「誰が戻っていいと言った。昨夜もお前は勝手に部屋に戻っただろう。お前は俺の物なのだから、俺の許可なく動くことは許さん」
「なっ!?別に私はなりたくて貴方の物になったわけじゃないから!!そもそも、貴方が勝手に決めたんじゃない」
「約束は約束だ。忘れたとは言わせんぞ」
約束という言葉を言われてしまうと言い返すこともできず、渋々その場に留まるしか今の瑠璃にできることはない。
こんな自分勝手な人が寂しいや悲しいなんて思うはずがない。
もしかしたら、昨日のは全て気のせいだったんじゃないかとさえ思えてしまう。
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