水瀬夏乃サイド

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水瀬夏乃サイド

「ねえ、大谷くん。私、君とキスする夢を見たよ。」 「えっ…?」 一学期の修業式を終えた放課後。 私、水瀬夏乃(みなせかの)は校庭の水道に近い木影に隠れていた。 いつも一緒に下校していた親友のるなには、用事があるって嘘をついた。 それにしても暑いな。 今はあまり汗かきたくないのに。 きっともうすぐ、あの人がここに来る。 あっ、来た…!! 大丈夫。言う言葉は、もう決めてある。 「ねえ、大谷くん。私、君とキスする夢を見たよ。」 「えっ…?」 あー…。 すっごく驚いてる…。 そりゃそうだよね。 だって私は、大谷くんの彼女の親友。 「ふふっ。るなに怒られちゃうね!」 あー…。違う違う! 大谷くんますます困ってる! なんでもう少し気の利いたこと言えないかな私。 だめだ、泣きそう。 笑え、笑え。 「じゃあ大谷くん、またね!野球ばっかじゃなくて、ちゃんと宿題もやるんだぞー!」 「おー。」 わ、振り返った途端、涙すごい。 でも、言えた。 最後に、言えた。 るな、ごめん。 でも、好きって言ってないから。 それだけは言っちゃダメだもん。 大谷くん、今日だけは私のこと考えてくれるかな。 そうだといいな。 ふう…。 明日は引越し。 二学期からは新しい学校。 大谷くんには言えなかったな。 でもこれでいい。 よし、忘れよう!新しい恋をしよう! そして、るなとはずっと親友でいたいんだ。 絶対。 END
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