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でもどんな集まりにでもつきもののこのイベントが、私はいつも苦手だった。
またこの季節が来たかとため息が出るくらい。あの好奇と同情の入り混じった視線に晒されるのは、いくら覚悟ができていても嬉しいものじゃない。
もちろん幼稚園児でもないし、苦手というくらいで逃げたりはしないけど、本当は堂々とサボれるマユちゃんがとっても羨ましかったりする。
そうこうしているうちに私の番が来た。
でも隣に座っていた裕太君が、直前で言ってくれたのだ。
「まずは自分の事を言えよ」
「え?」
「そっちは後で時間とるから」
裕太君の言いたいことはすぐ分かって、私は思わず顔を綻ばせて立ち上がった。
「えーっと、高二の坂元栞です。弓道は去年から始めました。まだまだ腕は未熟ですが頑張ります。今年は団体戦なんかでも結果を出せるようになりたいです。それから弓道とは関係ないですけど、歴史とか古典文学も好きです。今年は特に万葉集を読んでます。よろしくお願いします」
私が話し終えると、昴流君がひときわ大きな拍手をしてくれて、裕太君は柔らかい笑みを浮かべてくれていて……同学年二人の心遣いに、私も胸が熱くなった。
「はい、質問」
城田君が突然、手をあげた。彼は一人だけくだけた座り方をしていて、すでに態度が悪い。
「主将と坂元先輩は付き合ってんすか?」
「そんなの見りゃ分かるだろ」
裕太君や私が何か言う前に、昴流君が答えてしまう。
「だから間違ってもしおりんには手ぇ出すなよ。ユータに無茶苦茶いびられるぞ」
「お前なぁ、人聞きの悪いこと言うなよ」
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