1章 二年目の新学期

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「それがさ、あんまり印象無いんだ」  眼鏡をかけたおとなしそうな子だなってくらいで、と裕太君は苦笑する。私も当時の自分を思い出し笑ってしまった。 「そうだよね。あの頃の私ってガリ勉っぽい分厚いレンズの眼鏡かけてたし、髪の毛も下ろしていたから顔の半分が見えなかったし」  そんな私も裕太君の勧めで去年の途中からコンタクトレンズにしてみた。髪の毛もすっきりとポニーテールにして。去年の私が今の私を見たらきっと驚くと思う。 「私は最初から裕太君のこと格好いいなって思ってたよ」  裕太君は銀縁眼鏡のシャープな雰囲気の男の子だった。賢そうで、真面目そうで、それでいて朗らかで。とにかく良い印象しかない。 「それって、単純に袴着てたからじゃねぇの?」  袴で男ぶりが三割増しになるって話もあるし、と裕太君は言うけれど、それなら私は弓道部の男子全員に一目惚れしたはずだ。 「それにあの時の俺って、初日からマユと勝負して負けてたし」  彼はいまだに引きずっているみたいだけど、私と一緒に入部してきた高校編入組の一人である伊澤茉優莉、通称マユちゃんは中学生の頃には、神奈川大会で優勝してしまうくらいの腕の持ち主。今ももちろんうちの部のエースで、そんな彼女に負けたところでカッコ悪いとか感じるわけがない。 「まぁでも、私の中で一番インパクト大きかったのはやっぱり声かな」  私はにっこり笑った。 「裕太君の声って落ち着いたトーンで、一音ずつはきはきしてるから語尾まで聞き取りやすくて……ホントいい声」 「そう……かな?」 「うん。大好きだよ」  私の言葉に彼はしっかり頬を染めてくれた。  こういう照れた時の裕太君のリアクションはホントに可愛いと思う。  そんなところへガチャリと音がして、ショートカットで長身の女の子が入ってきた。     
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