1章 二年目の新学期

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「あいつは例外中の例外だぜ。新入部員で自前の弓まで持って来る弓道経験者なんて、俺も今まで見たことねぇし……って、そういやマユはまだ来てないんだな」 「あぁ、遅れるって言ってたぜ」  マユちゃんとは同じクラスの昴流君が言うと、裕太君は眉をひそめた。 「あいつまさか、最初の自己紹介の辺りをサボって、練習始まる頃を狙って来る気じゃねぇだろうな」 「うん? 当然そういう意味だろ。練習には遅れないようにするって言ってたし」 「ありえねえ」 「いちいち目くじら立てんなよ。マユが弓引くこと以外興味ないのはユータもよく知ってるじゃん」 「そういう問題じゃねぇよ。最高学年としての自覚ってもんが足りなさすぎんだろ」 「……ねぇ、どうしたの?」  ここまでの会話が実はいまいち耳に入っていなかった私は二人に聞いてみた。こんな時、いつもならそっとしておくんだけど、裕太君がやたらとカリカリしているから私も気になったのだ。  そして二人の説明でマユちゃんが遅れると知った私は、その理由を教えてあげたのだ。 「マユちゃんは生徒会の仕事をしてから来るつもりなんだよ。ほら、インターハイへ行くためには学校の姿勢から変えていかなきゃいけないって、張り切ってて」  うちの学校はキリスト教の教えを忠実に守っているものだから、日曜日の対外試合を認めていない。日曜日は礼拝をおこなうための日なので他のことをできないのだ。  それでも試合のほとんどは日曜日にある。日曜日不可という条件では高体連(全国高等学校体育連盟)にも加入できず、そうなると高体連が主催する高校生の夏の全国大会、インターハイにももちろん出られない。
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