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「小澤さんがレイコさんをレイプしたんです。物音に気づいた私が合鍵を使ってレイコさんの部屋に入りました。でも、少し遅かった。私は怒りで震えました。警察に連絡します、と小澤さんに言いました。小澤さんはわかったよ。自首する。だが、ちょっと時間をくれ。日本の両親や就職が決まっている銀行にも事情を話す必要があるから、と。私はその言葉を信じました。だが、小澤さんは逆に私を犯人に仕立て上げ、殺そうとした」
やはりそうだったのか。ペックの言っていることは正しいに違いない。
「レイコはなぜ黙っていたんだろう?」
おれはできるだけ冷静を装い尋ねる。
「レイコさんは小澤さんにレイプされた後、恥ずかしい写真を撮られてしまっていたんです。皮肉はものです。写真で未来を切り開こうとしていたレイコさんが、写真で辛い思いをするなんて……」
ペックは静かな怒りを言葉にこめる。
そのとき、エビ天そばが運ばれてきた。
「きましたね。さあ、いただきましょう。すいません。お箸をとってください」とペックがおれに頼む。
箸を渡すと、ペックは嬉しそうに勢いよく食べ始める。
しばらく黙って食べることに集中していたが、食べ終える寸前にペックは話し始める。
「私はガンジス川に流されました。ですが、途中で川岸に打ち上げられたんです。私は死んでいなかった。声をあげると、運良くすぐに村の人が見つけ、介抱をしてくれたんです。村の人は優しかった。ですが、ろくな医者はいない。命は助かりましたが、失明してしまった」
「なぜ、小澤のことを警察に言わなかったの?」
「わたしのような身分の低い者の話など、警察はろくに聞いてくれません。インドでは毎日ひどい事件がたくさん起きているんです。しかも、わたしは失明してしまったし、動きがとれなかった」
おれは黙ってペックの話を聞くしかない。
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