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「ぼくの計画があまかった。思ったより、お金がかかる。せっかくなら設備も良いものを揃えたいし、食材もしっかりしたものを仕入れたい。必ずなんとかしますから、もう少しだけ待ってください。目処がついたら、また改めて共同経営者の件についてご相談させてください」
「あの、おいくらぐらい足りないんですか?」
「三百万、いや、あと二百万あれば……。でも、大丈夫です。必ずなんとかしますから」
美咲の貯金はちょうど二百万と少しあった。
「わたし、それぐらいの金額ならなんとかできそうです」
「あっ、いや、さすがに美咲さんに出していただくわけにはいきません」
「わたし、いつか自分のお店を持つために貯金をしてたんです。二百万じゃあとても足りないし、自分の店を開けるのはいつになるかわからない。だから、渡りに船というか、むしろ好都合です」
「えっ、ということは?」
「はい。青山さんと共同経営者になります」
*
翌週、美咲は銀行に寄った後、カフェで青山に会い、お金を渡した。
その帰り道、一緒に歩きながら二人はお店のことについて話した。どんなお店にしていきたいか、どんなお客さまに来ていただきたいか。夢が広がっていった。
「もちろん、メニューも考えないといけないですね。青山さんの幸せな記憶のパンは欠かせない」
「あははは。そうですね。でも、いいんです。開店時にはなくても、ゆっくりと探していきます。美咲さんと一緒なら必ず見つかる気がする」
青山がそう言ったとき、小学校の前を通った。
ちょうど給食の時間。子供たちの歓声とともに、おいしそうな匂いが漂ってきた。
青山の表情が変わった。
「思い出しました。揚げパンです。給食に出ていた……」
そうか! 四角くはないけど、細長くて甘いパン。青山さんが探していたのは、揚げパンだったのか。美咲は心の中で叫んだ後、青山に声をかける。
「今から行きましょう!」
「どこへ?」
「お店です」
*
美咲は『ペンギンベーカリー』に着くなり、揚げパン作りに取りかかる。
給食風の揚げパンを作った経験はなかったが、ネットでレシピを検索し、材料をかき集める。必要となるのは、コッペパン、きな粉、砂糖、塩。どこにでもある食材だ。
作り方もいたってシンプル。コッペパンを油で揚げ、きな粉、砂糖、塩をまぶすだけ。
テキパキと段取りを整える美咲の姿を見ながら、青山が語り始める。
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