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気がついたときには、外は明るくなり始めていました。
時計を見ると五時前で、Mちゃんはやはり部屋のどこにもいませんでした。
夜中のうちにどこかへ出かけたのでしょう。私を置いて。
彼女の帰りを待たず、私はすぐさま部屋を飛び出しました。
鍵は見当たらなかったので、開けっ放しでした。後で文句を言われてもいい、むしろ言い返してやると思いました。
そのときの私は、不気味なものを見た恐怖より、彼女への怒りの方が上回っていたのです。
ホラー小説なんかだったら『その後、Mちゃんは行方不明に……』という展開でしょうが、厚かましくも彼女は大学にやって来ました。
けろりとした彼女の顔を見て、一発ひっぱたいてやりたい衝動に駆られましたが、なんだかばかばかしくなって止めました。
私はその後一切、Mちゃんと口をききませんでした。
一度、他の友人が
「Mとケンカでもしたの?」
とどういうわけかこちらを非難する口調で言ってきたので、私は苛立って
「Mちゃんのアパートに泊まればわかるよ」
とだけ言い返しました。
その後、その友人がどうしたのかは知りません。
あの部屋で、私が見たのは何だったのでしょう?
Mちゃんに訊けば答えてくれたのでしょうか。
まあ知りたくもないのですが、どちらにしろMちゃんは大学在学中に亡くなってしまったので、今となっては何もわからないままなのです。
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