密室の彼

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「いや、昔、そう聞いたことがあるんですけど」 「だが、どのみち、その例えは間違っている。  俺はプロポーズしてから、随分、お前を大事にしてきたと思うんだが」  あれ、プロポーズだったんですか?  そして、大事にしてきたって。  確か、断りもなく、無人島に拉致監禁してましたよね? と思う凛子の両の手首を握り、蒼汰は言ってくる。 「一昨日と昨夜、お預けにした分、今、此処で取り返してもいいんだぞ」  ……やはり、このケダモノを家にあげてはいけなかったか、と凛子が後悔したとき、蒼汰が言ってきた。 「まあ、手を出さなかったのは、俺が嫌だったのもあるけどな。  酔って記憶がないときが初めてって言うのは、お前も嫌だろうが、俺も嫌だから」 「そんな情緒もあるんですね」 「……常日頃から、お前よりはあると思うが、どうだ?」
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