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中学生の頃、林間学校で某峠へ行ったときのことだった。
男女混合の少人数グループで行動をし、都会では味わうことのできない自然の風景に心身ともに解放された心地で、たいそうはしゃいでいた。
引率する先生はさぞ大変だっただろうと今でも思うほど、私たちは興奮していた。
当時、どうしてそのような工程だったのかはわからなかったけれど、旧天城トンネルを抜けていく、というコースが組み込まれていた。
この峠といえばあの歌だよね、と誰かが言い始め、みんなで歌い始めた。トンネルという一種異質の空間に足を踏み入れる恐怖から逃れたかったのかもしれない。
(トンネルは、こんなにも長いものだろうか)
出口の明かりがとても遠く小さいということに、ふと、気付いた。
前も後ろも、真っ暗だった。わかるのは、両隣、そして後ろにいる友人の気配だけ。
このままどこへもたどり着くことができなかったらどうしよう、と不安に思う気持ちがどんどん大きくなっていった。その不安な気持ちは、全員同じだったのだろう。歌声は震え、恐怖を払拭するかのように一層大きく響いていた。
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