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「後ろに誰かいたよね」
「ひとり増えてなかった?」
何がいたのか、誰がいたのかという本当のところを見たくなくて、私たちは立ち止まり、お互いが見たものを口にした。
首がおかしく曲がった、黒い人影。
みんながそれを見ていた。
パニックになった私たちは、それまでつないでいた手を離し、我先にと出口へ向かい走り出した。あの影に捕まってはいけない、と本能で察知していたのだと思う。それほど経たないうちに、鋭いクラクションの音とともに、明るい光が後ろから私たちを照らした。
それは一台のタクシーだった。タクシーが私たちを追い越し、なんとなくそちらのほうへ視線を向けると、出口はすぐそこだった。そして、私たちが来た入口も、それほど遠い距離ではない場所にあった。あんなに真っ暗で、どれほど長く続くのかとうんざりしたトンネルは、実はそれほど長いものではなく、ましてや出口が見えないというものではなかったのだ。
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