夢の黄泉路

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夢の黄泉路

   *** 遺跡の調査を終えた頃、辺りはすっかりと夜になってしまっていた。 帰るにはなかなか難儀な時間である。 そこで光の召喚士は蒼き剣士と共に、近くの村の宿屋で夜を越すことにした。 「へぇ。パッと見、古くさかったけど、なかなかいい宿だな」 「うむ。レトロでクラシックというヤツだな。確かにいい宿だ。料理もなかなかに絶品だった」 「うんうん。確かに美味かったな」 と、そう言いながら光の召喚士は大あくびをした。 「眠くなったのか」 「ああ。何だろ。スゲー眠いや。遺跡の調査で疲れたのかな」 「なら、早く休むことだ。明日は帰り路だ。途中でもたつかれては敵わんぞ」 「わかってるよ。……うん。眠い。……もう寝ることにするよ」 更なる大あくびをして、光の召喚士は部屋に戻り、そのままベッドに沈みこんだのだった。 彼はすっかり失念していた。 袋の中に投げ込まれたままの、あの銀の心臓の存在を。 深い眠りの中に沈みこんだ光の召喚士の傍らの袋の中で、鈍色の鼓動が始まっていた。     
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