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…………………………………………。
「……められよ……」
……………………。
「……るじ、……ざめられよ……」
…………。
「主殿、目覚められよ」
誰かに呼ばれている。
蒼き剣士の声ではない。
知らない声だ。
まるで水銀のような、キラキラと重たい声だ。
「……うぅん? ……ここは……?」
目覚めた召喚士は周囲を見回しながら、寝ぐせにやられた頭を掻き毟る。
寝惚けているせいで状況が理解できない。
「……俺は、確か、村の宿屋で……?」
そう思って辺りを確認するが、そこはどう見ても村の宿屋ではない。
朱色と山吹色が渦のように混じり合った空。
そこに浮かんだ青緑色の月。
そして下には深淵の闇が広がっている。
そんな世界で、闇の上に伸びた一筋の光の道の上に、今、召喚士はいる。
「え? 何で? これは、……夢……?」
ようやく目を覚ました召喚士は慌てた。
立ちあがって見れば、闇から吹き上げる風が召喚士を取り巻いて舞う。
ゾッとする冷たさだ。
その冷たさに召喚士はその世界が夢ではないことを思い知った。
「でも夢じゃないとしたら、……ここは?」
それは誰に向けた問いかけでもなかったはずだ。
なのに、
「黄泉路というヤツじゃ」
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